著者情報
吉永圭
歯科医師、けいデンタルクリニック院長
大学卒業後4年目に開業をしている歯科医師です。
本書中に記載があるように、著者は多く歯科医の成功本を読んできましたがあまり参考にならなかったこと、成功本のやり方と自身の状況がかけ離れていたという記載があります。
著者は著者成りに試行錯誤を行い確信したことは「基本無くして成功なし」と記しています。
概要
当ブログ記者は本書を読むまで知らなかったのですが、歯科医院として独立開業するタイミングは概ね大学卒業後5-8年で30歳前後がボリュームゾーンのようです。著者は大学卒業後4年目に開業をしています。
これは医師の独立に比べるととても早い印象です。
医師は大学卒業後に2-6年程度の研修期間があることを考慮に入れても早いです。
感覚的には医師の独立開業の平均年齢は40才台の前半くらいかなと思います。20代や60代で独立する先生にも出会ったことがありますので、あくまで感覚的な平均です。
医科と歯科で異なるものの、日本の医療制度の中で同じ医療を提供する事業として歯科の経営ノウハウは医科でも十分に参考になるため、歯科経営の本もたまに読んでおります。
むしろ歯科クリニックは事業所が多く競争が激しい分、マーケティングやマネジメント面など経営として共通するところでは先を行っていることが多いので大いに参考になります。
儲かるために歯医者になるんじゃない。幸せになるために歯医者になるんだ。
これは本書の前書きに記されている言葉です。
本ブログ記者は多くの開業医と会ってきましたが、幸せそうに見える開業医が案外少ないということを感じています。これはしっかりと黒字を出しておりいわゆる「儲かっている医師」であっても例外ではありません。
儲かるという基準は人それぞれ、どこまで儲かったら満足するかの線引きは難しい、損益分岐点を超えたらなのか?いい車が買えたらなのか?
幸せになるための考え方や経営スタイルのヒントを本書から得られるかもしれません。
謙虚に学ぶこと
歯科医師免許を持っているからと傲慢にならずに、常に謙虚な気持ちで先輩から指導を受けること、歯科技工士・歯科衛生士・受付など全職種から学ぶことが重要です。
若いときこそ学びのチャンスで、分からないことがあれば徹底的に聞きます。
そして、初心の感覚(著者は初めての麻酔科での経験を例に挙げ、一歩間違うと患者さんの命に係わる恐怖があった)を忘れないことが重要です。
人とのコミュニケーションと信頼関係を大事に
著者は「通うのが楽しくなる歯医者さん」をコンセプトに掲げています。
そこで同じ船に乗るスタッフが同じ精神・目線・進路で居られるように理念を明記しています。
「いつまでも自分の歯で、健康的かつ快適な生活を送っていただくために」
=おいしくお食事が続けられる方法を提案し、全力でサポートします。
「スタッフの健康と笑顔が患者さまの模範となるように」
=当院では、スタッフ自身が患者さまの模範となるよう、スタッフの健康・輝く笑顔・真剣に取り組む姿を守り、さらにそのスタッフを支えている家族についても大切に考えています。
スタッフとのコミュニケーション
理念を実現するためにスタッフの笑顔と「ありがとう」の声かけを積極的に行っています。
結果的にはスタッフ同士の信頼感が増し、スタッフの働きやすさや患者さんが受ける印象へ良い影響を与えていきます。
患者とのコミュニケーション
スタッフだけではなく患者とのコミュニケーションも重要です。
医院全体を明るく、親しみやすい雰囲気にする工夫やはもちろんのこと患者さんと信頼関係を築くために
きちんと話をし、信頼できる相手だと理解してもらう努力をします。
「どうして治療をしないといけないのか?」「治療はどういうことをするのか?」を説明します。
これは大人のみならず、子どもに対しても行っています。
スタッフが良い仕事をできれば患者さんは付いてくる
患者さんからの信頼アップへつながることで大切なこととしてもう一つ挙げられています。
それはスタッフの技術を上げることです。診療技術はもちろんのこと、安心感のある話し方や適度な声がけ、気遣いなども技術の一つであるため、スタッフ同士で意見を出し合いながら、常に向上心を持って取り組んでいます。
その結果として、著者のクリニックでは「受付専任スタッフ」が居るというは興味深いことです。受付ははクリニックの印象を決める顔ともなります。その他のスタッフが受付を兼任すると、受付の対応品質も本業の質も下がることになるからです。
また、スタッフを家族のように気遣い、スタッフの事情で仕事を休まなければならない場合も気兼ねなく休みを取ってもらうこと、そして休んでもらうことで家庭での用事や疲れも蓄積せず、スタッフ同士関係がスムーズになり良い仕事をしてもらえることになります。
患者さんにもその空気が伝わります。
まとめ
「自身の成功ばかりを考えるのではなく患者が健康になることが目的であると考えていると、自ずと医院は成長を始める」と本書には記されています。
歯科医院でも医科医院でも関係なく、開業当初は自己実現のために開業された先生がほとんでしょう。
しかしいつしか、目の前の患者を捌くことや、スタッフの問題で頭がいっぱいになって幸せな仕事ができなくなっているケースは多いものです。
現在のマインドをセットし直し、本当に幸せな医療経営を行うため必要なものは何なのかを考える機会があっても良いと思います。
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