【書評】『医療経営の教科書 地域マーケティング編』医療経営新聞, 医療経営研究会

医療経営の教科書 地域マーケティング編 営業/マーケティング
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■著者情報

次のように記されています。

医療経営新聞.com 編集部内の専門家集団として発足した医療経営研究会にて、執筆及び編集が行われています。

医療経営研究会メンバー

(敬称略 順不同)

執筆陣

・石橋治朗 石橋税務会計事務所 代表 税理士

・関口陽平 税理士

・鈴木 巌 EYソリューションズ株式会社 マネージャー

・大崎泰寛 ビジョナリーキャッシュパートナー 税理士

・大川原基剛 株式会社 後継者の学校 代表取締役 中小企業診断士

・岡部眞明 (一社)グローカルコミュニケーションセンター理事長 中小企業診断士 行政書士 MBA

・佐藤広一 エイチアールプラス社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士

・柏崎幸一 柏崎幸一 法務事務所 代表 行政書士

・三山朋子 日本メディカルメンター協会 代表

・三山清 株式会社アントレプレナーセンター

編集

・児玉秀人 医療経営新聞.com 編集長

企画主宰

・深山健彦 医療経営新聞.com

※医療経営新聞.comのWEBサイトのURLがありましたが、先には飛べずでしたのでここちらでは割愛します。Facebookページはありました。

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概要

本書は医療機関にとって重要な患者獲得に関して地域マーケティングの重要性を述べています。

医療サービス、ことクリニックとなると基本的には商圏は半径1km程度の範囲になると言われています。

1kmは徒歩15分程度の距離とされますので、思ったより商圏の範囲が狭いと思う先生がほとんどです。

商圏内に多くの人が居住していれば十分かもしれませんか、地方となるとそうはいかないでしょう。

なお、日本の人口密度(1平方キロメートル内の人口数)は2020年時点で338人とされています。これは山なども含まれますので一概に参考にすべきではありませんが、1km程度の範囲の人口は多くはないという認識を持っておくのが良いでしょう。東京23区に限定すると人口密度は約15,000人ですが、人口が数十万人程の地方都市では人口密度は1,000-3,000人程度です。

よって、クリニックはその地域の住民が何を求め、どのような傾向があるのかを継続的に研究し、市場に合ったサービスを提供しなければなりません。本書では地域の医療インフラとなるために必要な考え方について具体例とともに記しています。

リピーターの重要性

どのようなサービスでも、新規に顧客をつかむよりはリピーターを掴む方が効果的とされています。

医療でも例外ではありません。

医療、こと急性期病院などはリピーターということを考えることは不謹慎で望ましくない面があるように感じますが、予防から早期発見など「かかりつけ医」の存在は患者さんになるという考え方があります。

クリニックは商圏が半径1kmほどとなり患者の候補となる人口の母数に限りがあるため、新規の患者の獲得はとても難しいものです。

そのために、リピーターを増やすことを考えるのが重要となります。

顧客感動とライフタイムバリューの最大化

リピーターは顧客感動を生み出すことによって生まれます。

医療機関の顧客感動はどのように生み出すのでしょうか?

医療を施し患者さんを治療することはもちろんですが、不安や不調を抱えて来院する患者に「ほんのちょっとの気配り」を正しいタイミングで提供することがポイントです。

医療機関における顧客感動は高級ホテルのような接遇やホスピタリティを提供するような難しいことではありません。

そして、今日の患者の感動(満足)が明日の患者の感動(満足)に繋がる、目の前の患者に対して感動を与えることが、今後の患者増加に繋がるということです。

顧客感動はライフタイムバリュー(顧客生涯価値;顧客と接点が出来てからもたらされる損益累計)の最大化につながります。ライフタイムバリューの最大化において重要なのは患者さんの人生に寄り添い「一緒に治療について考える姿勢」ということになります。

AI(人工知能)などのテクノロジーの進化があっても、人は人によってしか癒されないものです。医療における不易の価値は、患者さんに生きる勇気を与えるということであり、患者はこれを求めています。

事業における3つの宿命 フレームワークで地域マーケティングを見える化する

事業における3つの宿命とは、以下のものです。

・全顧客の全要望には応えられない。「選択」が必要。

・自院の経営資源には限りがある。「集中」が必要。

・他者と同じでは認知されない。「差別化」が必要。

地域マーケティングを見える化することで、これら3点を意識することができるようになります。

また見える化させるために有効なツールについて具体的に記されています。診療圏分析は見方についてはかなり具体的記されており、他にも3C分析、PEST分析、バリューチェーン分析、SWOT分析等のフレームワークツールにも触れられています。

見える化したマーケティング計画はスタッフと共有する

本書には地域マーケティングの成果を事業計画に反映すべき理由が6つ挙げられているが、上位2つは次のようになっています。

1.スタッフの事業全体の共有が効率化する。

2.スタッフの採用、育成、人事評価の際に役割の説明が効率化する。

つまりスタッフに関することです。

当WEBサイトでもよく医療は「人」のビジネスであるとお伝えしていますが、スタッフ管理の上手下手が経営に直結するということに関連することです。

マーケティング計画をスタッフと共有することで次のような効果が期待できます。

・患者数や単価など現状が数字で明確になることで、管理や目標が立てやすくなる

・数字を共有することで、職場全体で目的地に向かっていることが体感でき、現場が動きやすくなる

・やるべきこと(行動目標)が明確になり、役割分担がしっかりする

マーケティング計画をはっきりとさせスタッフに共有することで、具体的にどのターゲットに何のために何を行うのか? 新規の患者さんに来ていただくために誰が何をするのか? リピーターになっていただくために、誰がどんな感動を用意するのか?などが自然と行われ目標に向かっていき、業績が上がっていくのです。

まとめ

クリニックの商圏は小さくなりがちですのでその商圏において失敗しないためには、地域の状況(マーケットの大きさ、ライバルの存在、自院の強みなど)を把握することが重要となります。

何となく頭で考えるのでは多くの場合不十分です。頭のメモリーは小さいうえにすぐに消えてしまいます。

よって、見える化することが重要です。

見える化するために便利なフレームワークを使用することで客観的に自院の状況をみることができ、目標を正確に設定することができます。

例えば、旅行でニューヨークに行きたいときに目的地として「アメリカ」とナビで設定するよりも「Liberty Island, New York, NY 10004, United States(自由の女神像の住所)」とする方が正確なルートとなることは明らかでしょう。

正確な目的地を設定し、それをクリニック全体で共有することでブレることなく目標を達成していけるようになるのです。成功しているクリニックの多くは、このような目標設定の明文化とスタッフへの共有を行っています。

院長やスタッフがブレないように目標を明文化しておくことは、クリニック経営の教科書の1ぺージ目でしょう。

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