著者情報
長 英一郎, 山田 隆司, 有田 円香 (著)
長氏がインタビューする形式で、山田氏と有田氏を別々でお話しされているような内容です。
・長 英一郎
東日本税理士法人 代表社員
東日本税理士法人は医療介護に特化した税務、会計の事務所です。
WEBサイトを拝見したところ、税務会計や経営コンサルティングなどの定番のサービスの他にも、特定医療法人化や社会医療法人化のためのコンサルティングも行っているようです。
医療経営士資格取得に使える「なるほど、なっとく医療経営Q&A50」(日本医療企画や、「医療経営士3級〜1級予想問題集」(ストアーズ)なども執筆しています。
・山田 隆司
NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長
長らく病院広報に携わってきた方で、病院特有の広報誌や地域連携との広報のあり方など様々な広報活動に関わられてきたようです。
NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループは「全国病院広報実務者会議」などを運営を運営しています。
・有⽥ 円⾹
新聞社勤務を経て病院の広報を行ってきた方です。
本書ではマスメディアの広報の知見や病院特有の広報についての具体的な取り組みが参考になります。
概要
一般的な企業では当たり前のように存在する広報部門ですが、医療機関では無いことがほとんどです。
「良い医療をしていれば黙っていても患者は来る」という考え方があるのでしょうか?
このような時代は既に10年以上前に終わっており、病院広報の考え方が徐々にですが見られるようになってきました。
本書は長氏と山田氏、長氏と有田氏のインタビューという形で大きく2部構成となっています。
それぞれ前半、後半としてレビューを記します。
(前半)近年の医療機関の広報の在り方
企業では経営戦略的な部署として存在する広報やマーケティング部ですが、病院では組織が縦割りとなっており院内連携もなかなか難しいという実情があります。また、広報的な役割を果たす地域連携部門もあります。
その中で広報部門は地域連携部門よりもターゲットが広く、あらゆるステークホルダー(医療機関だけでなく、患者、自治体、企業など)を対象として文字通り広報します。
ホームぺージでの広報
看板広告と比較してのホームぺージの重要性を記しています。
駅の看板広告では医療機関の広告がよく目につきます、地方に行くと医療機関だらけです。
しかし、看板広告がどのくらいの効果を出しているのかのデータはあまり出ていないのです。
医療機関としては「無いと不安」ということで出している側面があるようです。
当ブログ著者も院長先生からよく広告に関する質問をいただきます。
ライバルが広告を出しているのでどうしても気になってしまうのですが、これはカラーバス効果、つまり意識しているから気になる(逆に言うと意識していないと気にならない)ことが大きな要因です。
よって、意識していない患者さんに対して看板広告を出すのはコスパが悪いのは明確です。
一方でWEBリスティング広告など、目的を意識して検索をしている人に対する広告はコスパが良いと言えます。
看板広告を出すのなら、新規開業時や大量広告でのブランディングを狙うときなど用途が限定されると言えます。
ホームページは特に「スマートフォン対応」や「症状検索」は重要となります。
スマートフォン対応
NTTドコモ系のモバイル社会研究所の報告では携帯電話の所有者のうちのスマートフォン比率は2024年の調査結果ではスマートフォン比率は97%となっています。
現在のスマホ社会において一般顧客の検索トラフィックはほとんどの場合、最低でも60%程度、多い場合は95%程度とされています。
PCでの閲覧を主にしたホームんページではなく、スマホ対応のホームぺージにしてスマホでの見た目を優先したWEBサイトを作成するのが重要です。
症状検索
ホームぺージにたどり着いてもらうときに症状検索がきっかけというのが多くなっています。
患者さんが体調不良になり検索をするときには具体的な医療機関名ではなく症状を検索してみるのです。
とくに「地域+症状」は検索エンジンに反映されるためにもホームページ内にキーワードを組み込んでおきたいです。例えば「千葉市 おなかが痛い」「おなかが痛い クリニック」などのキーワードです。
人の記憶を大事にする広報活動
医療機関は、地域の住民に対する広報として、様々な場所に出ていくコミュニケーションよりも広報誌やチラシを作ることがメインになっています。
健康セミナーなどコミュニケーションの取れる広報活動は未来の患者さんを集めるために重要としています。
他にも、外来食堂をコミュニティにしている病院の例が挙げられています。外来食堂で地域コミュニティセンター的なイベントを行うことで地域とのつながりを持っていくのです。
費用対効果が高いのはメディア露出
地元のテレビや新聞社、ラジオ、ネットなどのメディアに取り上げてもらうのは大きな効果がるとされまう。
ただ、メディアは完全な第三者評価なので、メディアが貴院を評価しないと取り上げてもらえません。
ですので、日ごろから貴社の方と情報交換をすることで成果に繋げていく必要があります。
(後半)広報誌をうまく使う
製鉄八幡病院の例を挙げられています。
製鉄八幡病院はWEBサイトのコンテンツやSNS、動画など一通りのことはやられていますが、ここでは主に広報誌の有効性について記されています。
待ち時間を逆手に取る
病院の外来は待ち時間が長くなりがちなためクレーム多くなります。
そこで広報誌で面白いものがあると手に取って見てくれ、待ち時間がストレスなく過ごせるというものです。
そのため、病行で来院している患者さんがさらに暗くならないように治療の話しばかり入れるのではないような工夫をしています。
家に持って帰ってもらえるような広報誌
広報誌を手に取ってそのまま返す人、持ち帰ってくれる人が居ますが、持ち帰ってくれた場合はその人の頭の中に病院名が残り続ける感じがあります。
そのため、病院の強みや治療法などをアピールしまくると、患者さんはノーサンキューという感じなるため、そのような内容はほどほどにしているようです。
GiveGiveGiveで地域の店を紹介する広報
広報誌から顧客獲得する意識はありますが、やはり良い情報を提供するということに重きを置いています。
地域のレストランを紹介したり、商店街を紹介したりすることで、その情報を知れる患者さんだけでなく、地域の企業の喜びます。
プロカメラマンを使った特集でスタッフエンゲージメントの強化
特集の際に「先生、カメラマンきますのでよろしくお願いします!」というと医師はとてもノッていただけます。
このような蓄積がスタッフの医療機関への帰属意識や仕事満足度の向上に繋がります。
まとめ
ほとんどの人がスマホを持つ超情報化社会において、ライバルとの差は情報発信の有無によって大きく開きます。
ライバルとの差別化をはかり、自院をブランディングし、選ばれる医療機関になるための広報は大きな意義を持ってきています。
良い医療や良い制度を提供しているのに、それが患者さんや地域に伝えきれていない医療機関が多くあります。マーケティングとブランディングで魅力を向上させ広告費が下がったり、採用活動が楽になることはよくあります。
当社ではWEBにおけるマーケティングやブランディングを得意としておりますので、興味があればぜひお問合せ下さい。
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