【書評】『医療者の為の法務入門: 弁護士&行政書士が伝える医と法の真実』放射線科医・画像診断医るな

【書評】『医療者の為の法務入門: 弁護士&行政書士が伝える医と法の真実』放射線科医・画像診断医るな 書籍レビュー
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著者情報

放射線科医・画像診断医るな

Xやブログ等で画像診断に関する情報発信、相談、若手育成などについて発信している方です。

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概要

本書は著者の放射線科医・画像診断医るなさんが、医療法務を専門とする弁護士、行政書士との対談を書籍化したものとなっています。

対談形式となっているため、難しそうな法律関係のことでも読み進めやすくなっています。

今の時代、全く知らないというのは危険を伴うことでもありますので、少しくらいは医療法務に目を向けるよいきっかけになります。

医療の現場で自分が医療訴訟に巻き込まれることはほとんどありませんが、話くらいは聞いたことがあると思います。

医療訴訟に対して過度に身構えると、質の高い医療を提供できなかったり、仕事のやりがいが落ちてしまうので良くない影響を与えるのですが、ある程度の線引きを知っておくことは自己防衛という意味では重要なことでしょう。

トラブルとなったとき具体的にどのような処遇になるのか、またそれを防ぐためにはどうすれば良いのかについてエッセンスが凝縮されているので、医師や経営者、医療従事者は一読の価値があるでしょう。

自己防衛のためにできること

医療訴訟を防ぐため、また訴訟を起こされても被害をもたらさないようにするためにも気を付けておくべきポイントについて記しています。

カルテが真実 診断の根拠や思考過程をカルテに残す

カルテに書いてあることは「真実性が担保されているもの」と裁判例として出しており、裁判所はこの立場です。

よってカルテに何も書かれていない場合は突っ込みどころが多くなってしまうため不利になってしまいます。

必ずカルテは書きましょう。

カルテは様々な証拠となりますが、重要なのはその診断をするに至った根拠が記されていることです。

これは訴訟においては、「決断は標準的な医療の水準として妥当なのか」とういところで判断されるためです。

また、カルテ内の文章の表現についても本書で触れられています。

医療では断言が出来ないので次のような言葉を多く使用うぃます。「稀」「疑う」「可能性がある」「否定できない」「矛盾しない」などです。

これらの表現だけで責任を問われることはなく、重要なのはそれに至った根拠と思考過程ということになるようです。

添付文書は正確に遵守する

ペルカミンS事件という有名な判例があります。ペルカミンSの添付文書には「二分間隔で血圧を測定するように」と記載がありますが、被告の麻酔科医は5分間隔で血圧を測定していました。

血圧は測定していたものの測定間隔は添付文書に従わなかったということで医師の過失となっています。

これは、最高裁判所の方での判例となっており未だ大きな影響を持っているようです。

医療秘書に問診をさせるのはアウト

看護師は保助看法で診療の補助業務として相対的医行為ができることになっていますので、医師の指示があれば供されると考えられます。しかし、医療秘書のような人に問診をさせているのはアウトだと考えられます。

問診の過程に「決断」などが求められる場合は看護師の範疇を超えていると考えられます。

例外もある~緊急は法を待たず~

緊急時は患者が振りを被る可能性があっても利益となる可能性が上回ることが明確な場合は、患者の同意が取れないなどの場合でも医療を提供できるとされています。

重要になるのはその判断に至った根拠をしっかりと記録しておくことになります。

ペナルティについて知る

賠償額

賠償額は死亡や後遺症尾大きさなど過去の事例を参照して算出されることが多くなります。

交通事故の場合「裁判所基準」に後遺症慰謝料が記載されてるのでこれらが基準となることがあります。

また、賠償金額の内訳としては主に、慰謝料、患者の逸失利益への支払い、患者への介護・看護料への支払いがあります。

狭義の慰謝料

損害に対して受けた苦痛に関する慰謝料です。これは誰でも同じとなります。

死亡の場合は2000-3000万円くらいになります。

広義の慰謝料

狭義の慰謝料に逸失利益や看護料というのを足したものです。

逸失利益は損害を受けた人が今後得られるはずだった利益を元に計算し、介護・看護料は家族や外部サービスで患者の看護を行う負担から計算します。

専門性の高い内容は専門分野に責任の比重が偏る

主治医が専門の内容について他の科の専門医にコンサルとしてもらった場合に起こった医療訴訟においては、専門的な判断を行った医師に責任の比重が偏ります。

開業医は病気の拾い上げに重きが置かれる

開業医の存在意義として病気のスクリーニングに重きが置かれています。

よって、精査や専門性については、総合病院より責任が低いと判定される傾向があります。

通常は医師個人が100%の責任を負うことはない

勤務医であれば使用者である病院も賠償を請け負います。なので、医師として負う責任は半分程度となります。さらに他にも被告となる医師等が居るようであればさらに賠償は分割されていきます。

ペナルティは過去の判例で決まっている

先のペルカミンS事件もそうですが、裁判では過去の判例というのが重要視されます。

とくに最高裁判所の判断は憲法上の指針となるため、非常に強い判例となります。

まとめと感想

モノを売るようなサービスでは、お金を受け取ればその対価としてモノを100%提供できます。

一方、医療サービスというのは、お金の対価として結果が100%保証されるのものではありません。

よって、どんなに誠実に仕事をしていても医療では結果が伴わないこともありますし、その結果を不満と捉えた患者が医療訴訟を起こすこともありえます。

しかし、医療訴訟を恐れるがあまり過度に保守的になり、積極的な治療を躊躇するような事態になると患者さんにとってメリットは減少してしまいますし、何より治療に関わる自分自身のやりがいも失われてしまいます。

本書を読むことで「これだけしっかりとやっておけば自己防衛が出来る」という線引きを作ることができ、自信のやりがいとともに、自信をもって医療という仕事に邁進できるような一助となるでしょう。

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