著者情報
医師YouTuberいっさ
整形外科専門医、医学博士。YouTuberとして、”医者のキャリア形成”を中心に医療に関する動画配信を精力的に行っている。
この本を読もうと思ったきっかけ
本記事の著者は医師ではありませんが、多くの医師を見てきました。
ありがたいことに事務長やコンサルティングの仕事を通じて、大学病院の教授、医療法人の理事長、病院やクリニックの院長・理事長、勤務医からアルバイトの先生までバラエティ豊かな医師に出会うことができました。
特に理事長や院長は自分の理想を叶えるべく独立し、ご自分の病院やクリニックの主として、ご自分の医療やビジネスに邁進しているものと思います。
しかし、開業時には目をキラキラとさせいた先生が開業数年後には「幸せそうには見えない」ということが往々にしてあります。
これは開業した先生だけではありません。勤務医として精いっぱい頑張ってはいる先生ではあるものの、どこか不満足に見えることが多いのです。これは独立して利益を多く出し多くの報酬を得ている医師にも言えることです。
一般人(本記事著者も含む)にとっては医師という職業は、高収入で地位も高いキラキラとしたもので羨望の眼差しで見るものです。特に、報酬に関しては勤務医の若い先生でも年収1000万円以上はあり、理事長であれば1億円というのも珍しくはありません。
とくに開業医の先生の支援をしていると色々な悩みや愚痴を聞き「この先生は幸せそうではないなぁ」と思うことが多くあります。もちろん幸せそうに仕事をしている医師も居ます。
いったいこの差は何なのか。。。
そんな矢先「幸せな医者になる10の法則」というシンプルなタイトルの本書を見つけ、拝読をいたしました。
一般人からすると「医師だったら幸せでしょ?」と思ってしまうのですが、実際はそうではないということ。では幸せな医師はどのような医師なのかを追ってみたいと思います。
概要
本書はタイトル通りシンプルに幸せな医師になる方法として、考え方を主にして10点挙げています。
医師という職業は資格業であるため、多くの医師が似たようなルートで医師になり、医師として似たような職場で似たような仕事をしています。
このように特定の固定された職業では考え方が固定化されてしましますが、その考え方を取り除くという意味で新たなマインドセットをもたらしてくれるのが本書になります。
自分の好きなことと嫌いなことを見極める
持続的な幸せを得るためには自分が医師の仕事で何が本当に好きなのかを見極める必要があります。
何が本当に好きなのかを見極める際には「得意なこと=好きなことであるとは限らない」「専攻分野の将来の発展性」「周りの評価」に惑わされてはいけません。
純粋に自分が朝から晩までやっていて「好きだ!面白い!」と思うものを選びましょうと著者は記しています。
さらに、持続的な幸せを得るためには、好きなこともするよりも嫌いなことをしなくする方がよっぽど大切だと著者は記しています。これは興味深い観点でしょう。
ただ、好きなこととと嫌いなことを見極めるためには、ある程度社会人経験が必要で、社会人として学ぶべきことは教科書に載っていないことの方が多く、座学で学べるものではないということを理解しておかなければなりません。
そのため、「色々と手を出す」ことからはじめてみると良いと著者は記しています。
競争社会から目を遠ざけ自分が好きと思えることをことをする
医師は医師になる過程で、医学部受験戦争、医学生中のテスト三昧、国家試験など常に競争にさらされているため、医師になってからでも飽くなき競争をし続けることに陥りがちです。
医師になった後も、同期の研修医との比較、大学のキャリア、自分の技量などで他人よりも優れていると競争することが多くあります。
しかし、他人と比べていては幸せな医者にはなれないと著者は記しています。
他人と比べるということはつまり、自分の判断ではないことになります。それは自分が本当に好きなことではなくて他人から影響を受けたことなのです。
本書では著者の苦い経験が記されています。
著者は大学でキャリアを積んで教授を目指していました。教授を目指した理由は著者の父が教授だったからです。そのため教授という「職位」以外に本当にやりたいことを見出せずにいました。
結局、著者はうつ症状となり諦めたのですが、これにより自分は医師の仕事の中で何が好きなのだろうと真剣に向き合えるようになれ、結果として幸せな医師に向かっていけたということです。
仕事の振り方を覚える
医師の仕事は、人とのコミュニケーションにより成り立つ仕事です。
医師の仕事は1人ではできません。後輩や同僚に仕事をお長居する際には必ず優しい言葉をかけましょう。
本記事著者より一言
特に開業医の先生は急に経営のトップとなり、他のスタッフのマネジメントを行わなければなくなるため、スタッフとのコミュニケーションに戸惑うことが多いものです。
医師は医学についてはプロですが、マネジメントについての実力はまだ完全には伴っていないことが多いということは頭に入れておく必要があります。
著者はここで、D・カーネギーの著書「人を動かす」を勧め印象に残った文章について記しています。
「ひとを働かせるには、奨励が必要だと信じている。だから、人を褒めることは大好きだがひとをけなすことは大嫌いだ。
気に入ったことがあれば、心から賛成し、惜しみなく賛辞を与える。」
「人は、誰かに食事を与えなければ、自分のやっていることに後ろめたさを感じます。ただ、ひとが最も欲している”やさしい言葉”
医師YouTuberいっさ. 幸せな医者になる10の法則 より
まとめ
本書は医師にならば幸せになるわけではないということを説いた上で、幸せな医師になるためのマインドセットを記しています。
よって、凝り固まった医師のキャリアを歩んでいるが幸せを感じていない医師、そのキャリアを歩もうとしているがどう選んだらよいか迷っている医学生や研修医にはこれまでにない視点を与えてくれるでしょう。
実は本書の10の方法の最後の10番目は、医師という資格職を超えたビジネス、日本を超え世界を見据えた考え方について触れています。
日本の医療そして医師の仕事は日本の国力に依存しているという危機感、医師というフロー型のビジネスの弱点について一つの学びになるでしょう。
これについては著者のご案内を含みますが、医師としては全く新しい視点が得られるものと思います。
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