著者情報
玉城有紀(たまきゆき)
医療法人義恵会 溝の口駅前皮膚科、自由が丘ファミリー皮ふ科、二子玉川ファミリー皮ふ科 総院長
帝京大学医学部卒業、日本医科大学武蔵小杉病院、東京女子医科大学皮膚科学教室入局、町田市民病院を経て溝の口駅前皮膚科を開院。皮膚科専門医。
皮膚科専門医を取得後に34才で開業されています。開業時には1歳の息子さんもおられたようです。
そして、39才で2院目、40才で3院目を開業されています。
M.A.Fという開業医コミュニティや医療経営大学という経営スクールにも参加され学ばれているようです。
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概要
多院展開するクリニックの医師であり経営者である著者が、忙しい仕事も充実したプライベートも両立しています。
このようなスタイルを確立するために著者が実践している「手放す」ことの重要性を軸に、仕事効率化、時間管理、人間関係、ライフスタイルなど医師が関心を持つテーマが取り上げられています。
自分がやらなければならないと思っていることは本当に自分がやらなければならないことか?
「周りの人がやっている」「完璧にしなければならない」という常識や既成概念にとらわれずに、他の人に任せたり、省力化したり、あえてやらないという「手放す習慣」を身に着けることが重要です。
これは自分自身の人生を充実したものにするために、本当に自分にとって大切なもののための時間を確保するためです。
仕事も家族も家事も全て100%こなすことは難しいため、最も大切なものを優先して、優先度の低いものには注力しないということになります。
何のために働くのか?
働くことの第一目的としてお金が挙げられることが多いですが、著者はそう捉えておらす、次のように記しています。
たくさんの税金を納め、不必要なものを購入するために大事な時間を使うより、自分や周りの人が心から楽しめるかどうか、ワクワクできるかどうかの方が大事だと思っているのです。
『手放す習慣』 玉城有紀 著 株式会社クロスメディア・パブリッシング
スタッフの力を借りる権限移譲
クリニックの運営においては、医師ではなくてもよい業務は積極的にスタッフに業務移譲、権限委譲を進めることで自分自身の時間を作り出しています。
一方で、任されたスタッフは責任感を感じるとともに達成感を得られるようになります。
スタッフの意思で業務が円滑に回るようにしておき、スタッフが自走できる仕組みを作るのが重要となります。
そして、スタッフのみで判断に困ることが起きた場合のみ、著者に連絡が入るようになっています。
【当ブログ著者より一言】
中でも興味深かった権限移譲は、「スタッフの採用時に院長面接をしない」という点です。
スタッフ採用の決定は院長でなくスタッフが行うということです。
ここまで権限移譲をすると、自動的に従来のスタッフは自身で考え、責任を持って新人採用や教育を行うということでしょう。
マニュアル化・固定化
患者さんのお迎え方法、カルテの整理、掃除の仕方、備品の在庫確認や発注など細かいところまで徹底的にマニュアルを作成しています。
新人スタッフでもマニュアルを読めば分かるようになっています。
マニュアルがしっかりしていれば、効率的に作業が進められ、その分、治療や患者対応などのコア業務に時間を割くことが出来、組織力も高まります。
ドクター向けのマニュアル
代診医師でも問題なく診察ができるようにマニュアル整備をしています。
とくに「こういうことはしないでほしい」ということを避けるべきリストとしてまとめています。
チェックリスト
掃除や在庫確認などを当番制にして誰がいつ何をやるのかが分かるチェック表を作っています。
チェック表があれば担当者が分かるので、「誰がやったのか?」と人を探す自手間が省けます。
モノの置き場を共通化する
著者の経営するクリニックは3つありますが、全てのクリニックで受付や診察室における物の置き場を全て決めています。
そうすることで、医師やスタッフがスムーズに行き来することができるようになります。
目標達成のためのスケジュール・タスクを管理する
著者は毎年の目標、毎月の目標を決め、その到達目標に対して期限を定めて、周りの人に公言するようにしています。
人に言うようにしているのは「やらなきゃ」という気持ちにして自分自身にプレッシャーを与えるためということです。
そして、目標のゴールの日から逆残して1か月、1日ごとに細分化して目標を立てて実行します。
まとめと感想
本書は自己啓発本としてまた、医師が抱える悩みや課題を解決するための具体的なヒントが詰まった本です。
著者は理想の自分や目標を定め、それを効率よく達成するために逆残し、人に任せるところは人に任せることで、結果的に自分にとって大事な時間を確保し、クリニック運営ではスタッフの権限移譲等により組織を強くすることに成功しています。
仕事に追われ、自分の理想やプライベートを犠牲にしていると感じている医師は、本書を読むことで、自分自身を見つめ直し、より充実した人生を送れるヒントになるかもしれません。
また、開業医として経営に悩む先生の一つの組織マネジメント方法として参考にもなるでしょう。
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