ホームページの制作会社をどのように選べば良いかという相談をよく受けます。これに対する回答は一義的に決められるわけではなく、施設のスタイルや経営者の思想により異なるのですが、私の経験上「こうするのが良いのは間違いない」という助言はしております。
病院やクリニックの開院時のコンサルティング会社の紹介でとりあえず金額だけみてホームページの業者を選ぶ方も少なくないと思います。しかし、ホームページはマーケティングの生命線になるのでしっかりと選ぶべきです。今やホームページはただの案内掲示板ではなく、情報発信をし施設のブランディングを行っていく自社メディアなのです。
ただ、多くの方はホームページに関して全くの知識がなく、どういう基準で選べば良いのか分からないと思いますので、私の方で「これだけは!」というポイントをお伝えしていきます。
どの施設でも共通して必要な機能
まず、どの医療機関に対しても共通して言えることは次のものになります。
- CMS(Contents Management System)で自前で更新できるお知らせやブログ機能が付いているもの
- スマートフォン対応(レスポンシブ対応)
- アクセスの解析機能
- 更新などで困ったときのサポートがあるもの
CMS(Contents Management System)で自前で更新できるお知らせやブログ機能が付いているもの
先にも申し上げましたが、ホームページはただの案内看板ではありません。自らリアルタイムで発信できる仕組みがあります。例えば、営業時間の変更や最近であればコロナウイルスに関するイレギュラー対応など、外部の方に今伝えたい情報を発信できます。このような情報は発信してあげないとクレームの原因となります。通常営業時間に診察が受けられなかったり、自治体のワクチン接種対象医療機関に掲載があるにもかかわらず何らかのイレギュラーでクリニックでは受け付けていなかったりすると、クレームをもらい、大きな手間や労力を使うことになります。
「患者さんが知りたいだろうな」という情報は先回りしてホームページに記載していけば、クレームを事前に減らすことができます。さらに、電話問い合わせも減るため業務効率が向上します。ひいてはスタッフの残業時間やストレスの削減、さらには院長等の責任者への負担も減るのです。
スマートフォン対応(レスポンシブ対応)
現在のインターネットの閲覧はスマートフォン(スマホ)によるものが80%を超えると言われております。事実、私の方で管理に携わっている多くの医療機関のホームページのアクセス解を見てみても少なくても60%台後半、多いところは90%程度がスマホからのアクセスになっています。
スマートフォンに対応していない昔ながらのホームページではPC用のホームページの画面がスマートフォンの小さな画面に表示されるためすべてが小さくなりとても見にくくなります。見にくいとユーザーは見てくれないので来てもくれないということが起こります。
ただ、PC(パソコン)からのインターネットアクセスもまだまだ多く存在しており、スマートフォンとPCの両方を使用するユーザーが40%程度存在するというデータもありますので、PCへの配慮も必要となります。
そこで現在最も主流なのは「レスポンシブデザイン」というものです。これはPCで見るとPCの画面用に、スマホで見るとスマホの画面用に自動的に画面が切り替わるという優れものです。
(当社HPのPC用画面)
(当社HPのスマホ用画面)
このようにすることでスマホでもPCでも(タブレットiPadでも)見やすくなりますので、レスポンシブ対応のホームページにすべきです。
アクセスの解析機能
ホームページに訪問してくれた人の数などを見ることができる機能です。
駅に出す看板ではたくさんの人が見ているとは思うのですが、実際に見た人の数は分かりません。看板を見たことで来てくれた人の数も分かりません。このようなアナログのマス広告は効果の評価・検証ができないのです。
一方でホームページはデジタルの世界ですので全てを記録として残すことができます。ホームページ内のどのページ(医師紹介、診察内容、営業時間、特定のブログ)が人気があるのかが良く分かるのです。
(当社HPのアクセス解析画面の一部)
(アクセスが少ないので自分をフォロー。現在当社は公式HPを営業ツールとして使う気はないので気にしてません、このブログのアクセスは気になりますが・・・。当社の方針は密に太く長くなので、このブログで当社や私のことを分かっていただいた方のみを顧客とする方針です)
解析システムの構築次第では下記のような様々な情報を取得することができ、地域や時期のニーズをつかむことができ、運営の助けになります。
- 訪問者の属性(性別、年齢、アクセスに使用している端末の種類など)
- 検索エンジンで検索したキーワード
- HP内でどのページをみて予約や電話をしたのか
- ページごとの訪問者の滞在時間
これらの情報はデジタルによる集患マーケティングに不可欠になります。少々専門的な内容になりますのでなかなかクリニック等では難しい部分はありますが。ホームページのどのページに何人くらいがアクセスしているのかは把握しておくべきことです。
もし、解析に興味があるようでしたら当社で解析システムの構築やアドバイスはできますのでお問い合わせいただければと思います。お問い合わせはこちら。
更新などで困ったときのサポートがあるもの
お知らせなどを更新していると、様々な要望が出てくるものです。例えば、「このお知らせを最上部で固定できないか?」という要望です。このような要望は対応できることは多いのですが、設定方法が分かりずらかったりします。
さらに意欲的な方はお知らせ以外の新規ページを作成したり、アクセス解析のためのツールを導入するでしょう。そうするともっと多くの疑問や要望が出てきます。
このようなケースでは全くサポートがないと厳しいことになりますので、ホームページを作成したらおしまいという業者さんは控えた方が良いでしょう。
施設のタイプや方針によって検討すべき項目やサービスについて
どの施設でも必要なものに加え施設によっては次のようなものを評価軸として検討するのが良いです。ただ、次のものは施設のタイプや方針によって優先順位が異なりますので後ほど私が考える優先順位について記していきたいと思います。
- 新規作成時のコンテンツ充実
- 更新や編集の自由度の高さ
- こだわりのデザイン
- SNSの埋込
- CMSの代表WordPressがベースであること
- WEBマーケティング対策
- 料金
新規作成時のコンテンツ充実
ホームページの新規作成時には業者と発注側が打ち合わせ、概ねの骨組み(ワイヤフレーム)を作り、そしてそのフレームに枝を付けたり、肉付け(コンテンツ追加)をしていくことになります。
とくにコンテンツはホームページに訪問した人が読み「このクリニックにお世話になりたい」と思ってもらうために重要なのですが、内容がユーザ目線(患者さん目線)でなかったり、内容が薄かったり、画像やイラストや表などの見やすい工夫がないとユーザは脱落していきます。
実際に診察や検査、治療を受ける患者さんにとっては「受診したらこんな感じかなぁ」とイメージ時を持ってもらうことが重要で、そのためには文字情報では足りませんので画像や動画などの視覚的な情報が欠かせません。文字でいくら表現しても、画像1枚で描けるイメージには勝てないものです。
ですので、ホームページ制作会社の多くは写真や動画の撮影を入れることが多いです。初期費用に撮影費用が含まれるところもありますし、オプションになっているところもあります。多くのクリニックでは写真撮影をお願いするのが良いとは思いますが、施設のタイプやコンセプトによっては画像をあえて入れず全てイラストで行うこともあります。
なお、「写真撮影くらい自分でできるよ」と思ってしまう方も結構多いのですが、ホームページに継続して掲載する用途でしたらプロに任せた方が良い場合が多いです。構図やピンとなどが段違いです。
診察内容など具体的な内容については、業者の方ではなかなか作成できないので医師の方でしっかりと作り上げる必要があります。そこでプロのライターをオプションとして入れることもあります。
のちにも述べますが集患WEBマーケティングに力を入れたい施設では質、量ともにコンテンツを充実させるべきです。
更新や編集の自由度の高さ
自由度には2タイプありますので要注意です。制作会社というプロ側から見て自由度が高いのか、発注側の素人から見て更新や編集ができ自由度が高いのかという2つの意味が考えられますが、今回は後者です。
ホームページは看板ではありませんのでいつでも更新ができます。ですので新規作成時に作ったものをずっと継続する必要はありませんし、適宜内容を変更したり追加していくのが正しい使い方です。内容の変更や追加の際に、ダイレクトで自分で変更できるのか、それとも業者にお願いをしないといけないのとでは大きな差が出ます。どちらもメリットとデメリットがありますが可能なら自分で変更できるものを選ぶのが良いでしょう。
自分で変更するケース
ホームページの内容変更には少しだけ知識が必要ですが、CMSのヴィジュアルエディター機能を使えば難しいHTMLのコードを使用することなく編集ができます。
メリット
- 自分で編集できるため時間的にスピーディーに対応できる
- (作業費が別の場合)業者の作業費用がかからない
- 業者に変更する内容を伝える手間がかからない
総じて「更新のハードルが下がる」ということになります。業者は責任問題を避けるため「一字一句内容を送ってください」というケースが多くあります。業者に伝えるのが面倒で更新を止めてしまうことがよく見られますが、これを防ぐことができます。
デメリット
- 少し知識と勇気がいる
- 誤ってミスが生じた場合の復元が面倒
- 最初は慣れるまで時間がかかる
モノにもよりますが次のようなビジュアルエディターで編集することになるので、これが出来そうであれば大丈夫と思います。心配かもしれませんがこれくらいは何とか院内できるような体制を作ることは非常に大事と思います。
業者が変更するケース
メリット
- システム上のミスの心配がない
デメリット
- 費用がかかる場合がある
- 変更点を伝えるのが面倒
- タイムリーにならない
これらのデメリットが大きく更新が滞っているホームページが多くあります。自院で更新はしないという選択肢は大いに結構ですが、少なくとも業者さんの方の対応がスムーズでスピーディーなことは非常に重要になりますので、しっかりと確認しておきましょう。
こだわりのデザイン
凝ったデザインにすることで他の施設との差別化ができたり、ユーザーの印象に残すことができます。一方でデザインを凝りすぎると、ユーザーの欲しい情報にたどりつきにくくなるというデメリットもありますので要注意です。
とがった専門性やコンセプトのある施設の場合にはそのコンセプトを視覚的に打ち出すのに有効です。ユーザー(患者さん)が限定的にはなってしまいますが、逆に限定したいときにはマーケティング的には有効な方法でしょう。
また、凝ったデザインのWEBサイトでは、自由度とトレードオフの関係になることが多いので内容の更新は自院ですることが難しくなる傾向があります。よって、業者による更新が必要になりますので、先に挙げたような業者に依頼することのデメリットに気をつけましょう。
参考までにとてもかっこいいクリニックのホームページを紹介します。新進気鋭のハウスメーカーと思えるほどで、実際の施設の建物にもかなりコンセプトを入れ込んでいるようです。「体験」を大事にしているのでしょう。医療業界の中ではかなりとがったブランディングをしていることが伺えます。ぜひ院長先生にお話を聞きしたいものです。
SNSの埋込
今やSNSはマーケティングには無くてはならない存在となっています。ホームページは基本的には一方的に情報を発信するのみで、見るか見ないかはユーザー次第ですが、SNSには「フォロー」の機能があるため双方向のコミュニケーションが可能になります。フォロワーには施設の情報が自動的に流れるようになりますし、やろうと思えばDM(ダイレクトメッセージ)の機能を用いて相互コミュニケーションも可能となります。これは集患マーケティングには強力で、例えばワクチン接種の案内などをSNSにアップすると、フォロワーにはリアルタイムでダイレクトにその情報が届きます。それによって「ああ、ワクチン接種しに行かなきゃ!」と啓発をすることができます。
医療にはあまり馴染まないですがSNSの裏技的強力ポイントで「バズる」というものがあります。発信した情報が拡散され、通常ならあり得ない人数にまで情報が届くことを言います。コロナ全盛の折にはワクチンや検査などの新鮮な情報は重宝されたため、私の携わっていたクリニックのSNSが何度かバズりました。バズることで遠方から患者さんがいらっしゃったり、テレビの取材にも来ていただけたのでそのインパクトには驚かされたものです。
SNSは集患マーケティングでのみで有効というわけではありません。採用マーケティングでも有効とされています。採用マーケティングという言葉はあまり聞きなれないとは思いますが、集患のような顧客マーケティングのエッセンスを人材採用にも適用していく考え方です。SNSを用いることで「職場の中が良く見える」「親しみを感じやすくなる」「施設のカラーを見せやすくなる」といった効果があります。
情報化社会でライバル施設の情報が簡単に手に入るようになった現在では、このようなマーケティング、さらにブランディングにまで昇華させていくのは経営的には非常に重要とされています。デジタルマーケティングやデジタルブランディングについてはまた別記事でご案内させていただきます。
CMSの代表WordPressがベースであること
CMSには色々ありますが、WordPressは世界シェア60%超え、日本シェアは80%を超えています。Wordpressがにこのように大きく普及した理由はいくつかありますが、シンプルで使いやすい、テーマによってはSEO対策(検索エンジンで上位に表示されるための対策)が搭載されている、利用者が多く拡張機能のバラエティやその情報が豊富ということがあるとされています。
筆者はエンジニアではないですがWordpressがベースのホームページでしたら問題なく更新等は行えますので、私のコンサルティング先がWordpressであれば様々なサポートがしやすいというのはよくあります。同じことは私の同業者や別のホームページ業者、もしかしたらスタッフにも言えることかもしれません。Wordpressで構築してあることで自分が使えなくても他の人のサポートが受けられる確率が高まります。
WEBマーケティング対策
ホームページを制作してくれる会社でも、いくらかカラーがあります。ホームページの制作がメインの会社なのか、制作も行う(または外注している)がマーケティングが強い会社なのかです。
そして、費用はこのマーケティングの要素で大きく変わってきます。単純に看板としてのホームページが欲しいだけであれば制作するのみで良いですので金額は低くなります。ただ、マーケティング要素(SEO対策、マーケティング的に有効な特別コンテンツ作成、定期的なコンテンツ作成、アクセス分析やコンサルティングなど)が入ってくると金額は高くなる傾向があります。
WEBのマーケティングに投資したい施設は、マーケティングの会社を選ぶようにしましょう。
「じゃあどの会社がマーケティングの会社でどの会社が制作メインなんだ!」と言われそうですので見極め方をお伝えしましょう。
マーケティングの会社はまず費用が高いので、業者によりけりですが、クリニックでしたら初期費用100万円、月額5万円以上が目安でしょう。制作メインの会社は初期費用30万円、月額2万円くらい迄が目安でしょう。
病院は規模にもよりますが200床クラス迄はクリニックの2~3倍、400床~クラスでクリニックの3倍~くらいでしょうか。大きな病院になるほどコンテンツ数の差が大きくなってくるので金額も大きくなります。
また、業者さんの提案の内容でも分かります。
SEO対策、WEB広告、アクセス解析、写真や動画の撮影、ライターによる記事、定期的なコンテンツ配信、SNS対策などが盛り込まれ、しっかりと具体的に何をするかが示されていればマーケティングの会社でしょう。
「SEO対策されています」くらいの内容でしたら制作メインの会社でしょう。
ただ、マーケティングに強い会社の中にはオーバースペックなところもあるので注意です。確実にお勧めできるのは次のような施設でしょう。
- 同じコンセプトの施設を複数展開している
- 医療であれば自費が中心になる施設
- 女性をメインターゲットとしている施設
私の経験上、本当に医療(保険診療中心)の集患マーケティングをしっかりとできる会社はごくわずかと思います。医療という特殊な環境を熟知し、医療広告規制を理解したマーケティングは医療の外側に居る人にはなかなか理解しずらいようで、マーケティングのプロから私に相談がくるくらいです。
私がお勧めしているのは、制作中心の会社で安く作って、マーケティングは行わないか一部を自施設が実施、マーケティングの戦略や実施部分を当社のような医療コンサルや医療マーケティングの会社に任せるという方法です。この方法ならコストはちょうど真ん中くらいで、効果はマーケティングに強い会社と同等以上になります。
料金
ホームページ制作サービスの料金はかなりバラエティに富んでいます。初期費用ゼロ円!なんてところもありますし、見積もりを取ったら数百万円ということもあります。
また、オプションや月額料金にも気を付けてください。とくに初期費用が安いところはオプションや月額料金で利益を得るビジネスモデルにしていることが多いです。
また、先にも上げたWEBマーケティングの要素も大きいです。具体的な料金は上に例を挙げました。
まとめ
これまでに挙げて来たポイントをしっかりと見定めれば、安い業者でも全く問題ありません。
初期費用も月額費用も2倍の金額なのに色々と要望を満たす(難しい要望ではなくただアクセス解析を入れたりページを増やすだけ)ことができず、半額の業者に切り替えて集患がうまくいったというケースは何度も経験しています。それくらいホームページ制作会社の料金と対応機能は適当でええかげん(方言失礼)なのです。
ちなみに私がよく利用している制作会社は最安クラスです。しかし、先に挙げた必要な機能を満たしていれば問題ありません。私のコンサルティング先は皆満足しています。気になる方はお問合せください。合うかどうかをお教えすることはできますので。
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