著者情報
鈴木恵子
おおるり眼科クリニック事務長です。おおるりクリニックは著者夫が院長を務めるクリニックです。著者自身には看護師や医療事務などの医療専門職の経験があるという表記はなく、専業主婦から新米の事務長として開業から手伝っているようです。
他にも同著者の書籍についてもレビューしております。
静岡県島田市のクリニック、2005年に開業との表記があります。
概要
あまり表立って触れられることのない医療機関の整理収納について体系的にまとめている書籍です。
たかが整理収納、されど整理収納ということで、整理収納がしかっかりとできているクリニックでは増患やスタッフモチベーションの向上など経営的にも大きなメリットがあるということを示しています。
また、医療機関ならではの、安全性や個人情報の保護、管理において注意すべき法的側面についても記されており、医療機関ならではの内容となっています。
一般消費者向けにも整理や収納術についての書籍は多く出版されておりますが、それを医療機関に適用するために体系化した内容となっています。
「何か受付がしっくりこない」「何度も同じ作業をする」「よく人とぶつかりそうになる」など何となく違和感を感じていることがあれば、案外それは整理収納によって改善されものかもしれません。
日々の違和感とその原因について目を向け、改善に努める意識を育てていくことは、整理収納だけではなく、全ての業務にとって非常に重要なことです。この意識が医院の組織作りや良い経営に繋がっていくでしょう。そのためのファーストステップとして本書を見ながら整理収納をはじめてみるのはいかがでしょうか?お金をかけずに行える方法も多く記載がありますから。
後回しにされがちな整理収納
売上の増加など効果が目に見えないため、何となく整理収納をしていたり、「元々ここにあるから」という理由で継続していることはよくあります。
しかし、モノが散らかった環境や置き場所が不適切な場合、脳はストレスを感じ集中力を欠くことになります。整って適切な環境にになると無駄な作業やミスが減り、心の余裕を持てたり医療事故の防止にもつながります。
収納のポイント
とくに受付は患者さんから見られる顔となる第一印象となるため重要なところです。
受付は散らかりやすい場所でもあるため、受付収納の整理整頓に力を入れることはクリニックの印象向上につながりますし、きれいな受付環境では受付スタッフもモチベーションが上がり、患者さんへの対応などクリニックの第一印象を良くすることにさらに貢献します。
縦横の空間を上手に利用
ついつい書類やモノを並べてしまいがちな受付ですが、収納棚を上下に仕切ったりフックを取り付けることで収納スペースを増やす方法を提案しています。
そのためのツールとして100均がものが利用しやすいと、コストをかけない方法についても触れています。
個人情報の取扱い
個人情報が他の人に見えないようなまた、漏洩対策にもつながるような整理について記しています。
ミスを出さない仕組み作り
ファイルのラベリングや、患者さんに渡すものは1か所にまとめるなどの工夫について記しています。
感染症対策
感染症対策がなされているクリニックは印象を上げる要素となります。
管理のポイント
整理整頓後はきれいな状態をキープするための管理が重要となり次のようなポイントを挙げていますます。
- すぐに片付ける
- 捨てる基準・点検や掃除当番
- 恒常的にチェックする
とくに、チェック項目に関してはかなり具体的に書かれており、ここは大いに参考になりそうです。
トイレの便意のフチ裏、自動ドアの溝に溜まった砂利などは案外気づかずに放置しているクリニックも多いと思います。
美しく整理された場所から学び美意識を養う
一流のレストランやホテルは居心地がよいですが、居心地を構成する要素として「整理整頓されている」というのがあります。
一流のレストランやホテルをスタッフと利用し、本物のサービスを知ることで、サービスを与える側の気持ちを理解できるように著者はしているということです。
また、経営者自身の美意識が重要であると記しています。意識の高いスタッフの採用や、スタッフ教育をおこなうにしても、経営者に基準となる美意識が無いと実行できないため、クリニックはいつまでたってもきれいな状態を継続できないためです。
まとめ
整理収納というのは多くのクリニックでその部署の個人の感覚に依存していることが多いと思われます。
また、「もともとここにあった」など昔からの理由なき運用も多くあります。
これらの考え方をなくし、ゼロベースで、「クリニックとしてどうすれば最適か」ということに主眼を置いていくことで収納整理だけでなく、他の業務についても改善がなされ、良い組織、良いクリニック、良い経営へと繋がっていきます。
整理収納は取り組みやすい課題ですので、クリニック全体の最適化のためのファーストステップとして本書を利用してみても良いでしょう。
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