【書評】『医療経営の教科書 財務・管理会計編』医療経営新聞, 医療経営研究会

医療経営の教科書 財務・管理会計編 書籍レビュー

著者情報

次のように記されています。

医療経営新聞.com 編集部内の専門家集団として発足した医療経営研究会にて、執筆及び編集が行われています。

医療経営研究会メンバー

(敬称略 順不同)

執筆陣

・石橋治朗 石橋税務会計事務所 代表 税理士

・関口陽平 税理士

・鈴木 巌 EYソリューションズ株式会社 マネージャー

・大崎泰寛 ビジョナリーキャッシュパートナー 税理士

・大川原基剛 株式会社 後継者の学校 代表取締役 中小企業診断士

・岡部眞明 (一社)グローカルコミュニケーションセンター理事長 中小企業診断士 行政書士 MBA

・佐藤広一 エイチアールプラス社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士

・柏崎幸一 柏崎幸一 法務事務所 代表 行政書士

・三山朋子 日本メディカルメンター協会 代表

・三山清 株式会社アントレプレナーセンター

編集

・児玉秀人 医療経営新聞.com 編集長

企画主宰

・深山健彦 医療経営新聞.com

※医療経営新聞.comのWEBサイトのURLがありましたが、先には飛べずでしたのでここちらでは割愛します。Facebookページはありました。

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概要

本書は管理会計を導入することにより、目標や課題が見える化され、いつ、だれが、なにをすべきかが明確になること、それによって同じ売上、例えば1億2千万円の医院の15年後の資産の差が2億円以上になるとしています。

税理士や会計事務所に任せているから問題ないわけではないと記しており、管理会計を任せるパートナーの見つけ方も記しています。

管理会計とは

あまり聞きなれない管理会計という言葉なのですが、後半の第5項ではじめて管理会計とは何ぞやというのが出てきます。

なお、本書の前半は管理会計を導入することのメリットを挙げています。

会計には制度会計と管理会計の2種類があります。

制度会計は外部向けのもので、財務会計と税務会計があります。財務会計は金融機関や株主のため、税務会計は税務署のためのものです。これらは決められたルールに基づき正確性を優先するものになります。

管理会計は内部向けのものです。医院、組織の現状をリアルに把握するためにルールは経営者が設定し、経営者がこれを使って意思決定するという目的を優先するものです。

具体的には、直近3か月分の決算書、税務申告書、売り上げ計画書を用意すると記されています。

そして、経営者は最新の書類や資料がいつでも取り出せるようにすべきということで、具体的に法人案内・パンフレット、定款、契約書、中期計画表、総勘定元帳、不動産一覧などの37種類の資料を掲載してくれています。

しかし、これらの資料を具体的にどのように使用するかというところまでは、本書では深く触れてはいません。どちらかというと管理会計パートナー(外注ということ)が行ってくれるような記し方です。

管理会計は未来へ飛び立つ飛行機のフライトメーター

医院の理念が明文化かれていても、ゴールが見える化されていないとゴールにたどり着けません。

ゴールにたどり着くためには未来思考で考え逆算しなければならなく、そのためには計測可能な数値を用いる必要があります。 

また、現在地が見えていないと必要な手段もや時間、費用なども計算できません。

つまりその計測方法が管理会計ということになります。

税務会計の月次決算では遅すぎる

売上ベースで管理をすると医療保険制度上入金と2か月程度ずれが生じます。税務申告では売上ベースで行いますが、管理会計では入金ベースで考えることを勧めています。

例えば4月の決算情報が6月に出てくるということになると、2か月前の数字を見ながら判断を行うことになります。同じ情報でも得られるまでの時間で価値は大きく変わります。

重要な判断を2か月遅れで行うのは、リアルタイムな判断に比べると圧倒的に質が落ちるということです。

人材の定着

管理会計により院内の課題が数字で表されます。

この数値から目標を設定し、スタッフと共有することで、誰が何をすべきなのか役割が明確になります。

役割が明確になると、スタッフの組織への帰属意識が高まり、離職率が減ります。

【本ブログ著者より】

スタッフのエンゲージメント(帰属意識)の向上は、人材採用が難しくなる近年、とても注目されています。エンゲージメントに関してはこちらの記事の書籍レビューで記しています。

また、管理会計に基づいた評価基準を作ることで、スタッフは正しく評価されるようになり、離職率低減に役立つとしています。

まとめと感想

本書では管理会計を導入することで、目的や課題をできるだけリアルタイムで見える化することのメリットを記しています。

そのメリットとは主に、経営者がぶれないようになることや判断の早期決定による質の向上、役割の見える化によるスタッフエンゲージメントの向上です。

一方で、本書では管理会計を始めるための具体的に突っ込んだ手法については明記が無く、「よい管理会計のパートナーの見つけ方」の項目zを設けることでとし、税理士等への外注を前提としていますので、管理会計を自院で行えるようにするために本書は使用できないと考えた方が良いでしょう。

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