【書評】『クリニックの防犯・防火・安全対策について考える: クリニックの危機管理安全対策』 寺島徹

クリニックの防犯・防火・安全対策について考える: クリニックの危機管理安全対策 書籍レビュー

著者情報

寺島徹

クリニック開業コンサルタント、防犯設備士、宅地建物取引士、危険物取扱者、防火管理者。

概要

防犯や防火など著者独自の視点からクリニックの安全管理を考えている著書です。

これらは開業時には他の確認すべきことが多くなってしまい、見落としがちなことですが、万が一の命に関わることです。

本書は限られたリソースの中でできる限り安全上のリスクを減らすかの参考になるでしょう。

また、防犯は警備会社が居れば安心ということでもないと記され、警備会社のサービスの限界についての記載もあります。

火災対策

建物の構造

火災避難の観点から、入り繰りと非常口以外にもベランダ等から逃げられるような構造はリスクが軽減されます。(一方で、侵入のリスクも考える)

袋小路で逃げ場がないようなレイアウトの建物は避けたいとの記載があります。

消化器

消化器にはABCマークがあり、どのような火災に対応できるかが記されています。

置いてある消化器の表示内容を確認しましょう。

A:木材、紙、繊維などの普通火災

B:ガソリン、灯油などの油類の火災

C:配電盤、コンセントなどの電気火災

一酸化炭素中毒対策

住宅火災の死亡原因の4割が一酸化炭素中毒が原因となっています。煙の中の無色透明の一酸化炭素を避けながら火災現場から逃げるための工夫として以下のようなものがあります。

煙が広がるスピードは水平方向よりも垂直の方が速い

煙の広がるスピードは水平方向(横方向)は歩くスピードよりも遅いが、垂直方向に上るスピードは駆け足でも追い付かれてしまうスピードです。

そのため、高層階への移動は防火扉が機能していなければ危険ということです。

一酸化炭素中毒を防ぐ

煙や一酸化炭素は高いところに溜まります。

一酸化炭素中毒を防ぐために、濡れたタオルやハンカチを花と口に当てる、姿勢を低くして非難するなどの対策が必要となります。

地震対策

1981年6月以降に建築された新耐震基準適応の建物、もしくは耐震適応工事が施された建物の安全性が高くなりますので、この基準を確認し物件選びをしましょう。

防犯

受付カウンターのレイアウト

受付カウンターのレイアウトば待合室全体を見渡されるようにし、どうしても死角ができてしまう場合はミラーなどで対応します。

泥棒が嫌がる防犯対策

1 音 大きな音や警戒音が鳴ることを嫌う

2 光 敷地に入る際に明るく照らされることを嫌う

3 人の目 犯行をするための死角がなくなるのを嫌う

4 時間 侵入や貴重品持ち出し時に時間がかかることを嫌う

3に関して、具体的には塀や植木で敷地内を隠さないことはポイントとなります。

4に関して、侵入時間が5分以上かかる場合に諦める窃盗犯は70%といわれているようです。

侵入窃盗の大半は窓から

最も空き巣で多いのがガラス破りです。

ガラス破り対策として、窓に防犯対策フィルムを貼ること、アルミ面格子をとりつけるなどがあります。

その他、補助錠(時間がかかる)、感知式ライト(光)、防犯ブザー(音)を併用することで侵入を防ぎます。

【当ブログ著者より一言】

地方の開業では自宅と同一になっているケースもありますが、このあたりも検討の上で、塀や植木について考えましょう。

診療科によっては中を見えにくくしたい気持ちが出てくるかもしれませんが、防犯上は不利になるということを理解した上で打てる対策を行うのが重要となります。

防犯カメラ

本書では防犯カメラシステムについても具体的に説明がされています。

新規開業時でのポイントとして、参考になる点としては以下の点です。

カメラシステムによっては内装工事で天井を開けているときに施工を行うことで、配線工事楽にでき工事費を抑え、配線がきれいに仕上がるというメリットがあります。

盗聴器

外部からのみならず退職した職員の逆恨みなど様々なきっかけで盗聴器は仕掛けれれ、個人情報や機密情報が盗まれるリスクがあります。

盗聴器発見器(1万円以下で購入可能、安すぎるものは安価すぎ正確性に欠ける)で確認することが出来ます。

院内暴力・セクハラ

女性の患者を男性医師が診察するときは、女性スタッフを同席させるなどの防御策は必要。

診療内科などの診療科ではあえて机を挟んで患者さんんから手が届きにくい配置を考え、対面で話すときも真正面でなく少し角度を付けることで心理的に敵対心を芽生えにくくする工夫をします。

警備会社では充分でない

警備会社は来るまでに25分かかりうる

警備会社は警備業法施行細則で異常警報から25分以内に到着しなければならないという規則があります。

逆に言うと最大25分かかることが前提ということです。

もちろん、25分という時間では、暴漢に襲われた場合は十分な時間ではありません。

また警備会社は警察と連携体制を取っていたとしても万全ではないということが分かります。

院内シェルターの考え方

身を守ること、人の命が第一優先ですので、院長室など院内シェルター機能をもつ部屋を準備しておくのも一つの手です。

院内シェルターには非常押しボタンや電話を備え、扉は開閉の早さの面から引き戸ではなく開き戸とするなどの工夫が必要となります。

まとめと感想

クリニックの防犯や防災について専門的に触れている書籍はあまりありません。

ページ数はあまり多くない書籍なので、余裕があれば見てみると良いでしょう。

また、ハード面でいくら備えていても、日ごろ訓練を行っていないと使いこなせないものです。防火防災訓練を定期的に行うことで、クリニックの中で意識を高く持つことが重要になってきます。

また、このような訓練を行っているクリニック、意識の高さというのは患者さんにも伝わります。安心なクリニックとして集患やスタッフ確保にも繋がることですので、安全なクリニックを作り上げていく事は経営の上でも重要なことでしょう。

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