【書評】『開業医・医療法人 すべてのドクターのための節税対策パーフェクト・マニュアル 増補改訂2版』 税理士法人 和  社会保険労務士法人 和

『開業医・医療法人 すべてのドクターのための節税対策パーフェクト・マニュアル 増補改訂2版』 税理士法人 和  社会保険労務士法人 和 書籍レビュー

■著者情報

税理士法人 和(なごみ)

社会保険労務士法人 和

ホームぺージを拝見したところ当税理士法人にはいくつか事業部がありますが、「医業経営支援事業部」なる部署を持ち、医業に特化したビジネスも行っているということが伺えます。

税理士法人 和|なごみグループ
税理士法人 和。大阪・東京の税理士、社会保険労務士を中心とした専門家集団です。「ヒト」の問題、「カネ」の問題をワンストップに解決するとともに、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、弁理士、公認会計士等の専門家とのネットワークにより、お客様に最適なソリューションを提供します。

概要

著者である税理士法人では「医業経営支援事業部」を持つだけあって、開業医や医療法人に特有の制度などに精通しており、目次を読むだけでもその専門性が伺えます。

「MS法人」「診療報酬収入は審査減後の金額で計上」「窓口未収金の貸倒損失処理」「ドクター雇用時の経費精算」などは医業について深い理解があるからこそ記せる内容でしょう。

もちろん中小企業に共通の税金対策である共済制度や確定拠出年金(iDeCoなど含む)不動産投資についても網羅されています。

開業医や医療法人には顧問税理士がついているとは思いますが、顧問税理士は多くの顧客を抱えておりますし、よほど特化していない限り医業以外の顧客の方が多いことが普通です。

そのため、税理士とはいえ専門家間で知識に偏りが生じます。

税理士の知識を補完するような意味で本書を置いておくと、しかるべきタイミングで例えば「新しくドクターを雇うんですが経費枠でうまくやりたいのですが、具体的にはどうしたら良いでしょうか?」などと、税金対策を漏らすことなく節税に繋げられます。

そのためには、開業医や医療法人の理事長の方で触りだけでも良いので「こういう節税方法があったなぁ」というのを頭に入れておくことをおすすめします。

本書は節税に関する109の項目を医業ならではのケースとともに端的にまとめてあり、それぞれの難易度と節税効果について☆の数で記してあるため、どの項目を重視した方が良いのかが一目で分かるようになっています。

まずは難易度が低く、節税効果の高い部分から読んでみても面白いかもしれません。

難易度が低く節税効果の高い方法の例

社会保険診療報酬の所得計算の特例

通常は経費は実際に使用した金額から計算されますが、この特例は社会保険診療報酬に一定の率を乗じた額で経費とみなすというものです。

ですので、実際に1年間の経費を計算してみたものと、特例の計算をしてみたものを比較して有利な方を使えばよいということになります。

こちらの特例は条件付き(その年の社会保険診療報酬の金額が5000万円以下であり、かつ医業及び歯科業の収入金額(社会保険診療と自由診療の合計額)が7000万円以下であること)ですが、条件はこれだけだということです。

本書では具体例も記されており、その例では数百万円という多いな節税につながっていますので、知らなきゃ損というものです。

決算前に広告宣伝経費使い次期の増患を得る

開業して一定の期間を経ると患者の増加が鈍くなります。その対策として、これまで駅構内の看板や電信柱などしか広告を出していなかったなどの場合、別の媒体で広告を出したり、伝え方を変えるだけで新しいニーズをつかめることがあります。

最近はインターネットで検索した上で来院する人が多くなっているため、看板には詳しく書けない診療方針や施設の紹介などをホームページに記載することで新たな患者層にリーチできることが多くあります。

ホームページを作るだけではなかなか人は来てくれないのでWEBマーケティング(インターネット広告、SEO対策、MEO対策、SNS、予約システムなど)を併用することで効果的に機能します。

例えば決算前に、WEBマーケティングの費用を1年分を前払いしたということであれば短期の前払いとして全額費用にできることもあります。

今期は節税、来期は患者増と一石二鳥となります。

返済不要の助成金

節税とは少し異なりますが、お金がもらえる制度についても本書にはしっかりと記載があります。

助成金は主に雇用に関することで国の政策に合った取り組みを行うことで得られるお金です。

要件を満たしているのに助成制度を知らなかったり申請が面倒だという理由で何十万円というお金を得られないということが多々あるものです。

多くの種類があるため一部のみの抜粋となりますが、例えば「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」というものがあります。

ざっくり説明すると、採用当初は有期契約で雇用し、6か月を経過した日以降に正社員として無期契約で雇用し給与をアップさせ6か月以上雇用することで数57万円の助成金が支給される対象となるということです。(申請他、詳細要件は他にもあります)

このような仕組みを知っているのとしていないのでは大違いです。

医師会に加入することで加入できる医師国民健康保険組合

これはよく知られているものですが、個人事業主として国民健康保険に加入するよりは医師国保の方が多くの場合は有利となります。

また、勤務医時代から開業医になるタイミングの期間などで医師国保に加入できない場合は、勤務医時代の社会保険の任意継続がお得なのでぜひ利用しましょう。

まとめ

税金のことは税理士に丸投げでよいと考えている方は多くおりますが、こと医業については一般的な会社とは異なる部分が多く存在します。

また税理士も人であるがゆえ得意分野に偏りがあり、全て網羅するのは難しいというものです、網羅できていたとしてもそれを全て経営者に事前に伝えておけるかというとさらに困難でしょう。

よって医業経営者は少なくとも「こういうケースで使える節税方法が確かあったな」くらいの知識を入れておくのが良いでしょう。

節税は期限がギリギリでは十分には行えないため、事前に知識を入れておき、手元に本書のような辞書的な本を1冊置いておくことをおすすめします。

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