著者情報
八納慧果
心理カウンセラーであり、ヒアリングを通してスタッフへの精神的ケアを行うとともに、経営者にその結果をフィードバックすることで経営的なサポートも行っています。
著者WEBサイトはこちらです。
著者WEBサイト内の「少人数の企業のチーム・コーチング」というものを行っており、そこで得られた知見が本書でまとめられています。内容については以下のような記載があります。
少人数の企業(クリニック・オフィス)のスタッフ全員のコーチングを行います。一人一人の資質を捉え、長所に目を向けることで、互いが支え補う関係になり、クリニック・オフィス全体のパフォーマンスが向上します。経営者の方が早期に個々の問題に気づける、離職率を下げるなどのサポートをしています。
本書では主にWクリニックの事例について記されています。
Wクリニック
概要
本書は小さなクリニックにおけるスタッフマネジメントや教育、相応しい人材の採用についてのポイントについて記しています。
院長はクリニックにおいて医師であり経営者です。診療として忙しく現場をこなしながら経営者としての職務も行っています。
「経営者はスタッフのことを内面から捉えられるだけの時間と余裕がない、ということです。・・・大変忙しく、仕事以外のことを話す時間がとれない・・・優秀なスタッフも含めて、内心では自分のことでとても悩んでいて、突発的に辞めてしまいそうになる・・・」
筆者はこう記し、スタッフをフォローしスタッフの状態を把握することでクリニックの問題に素早く気づき予防することが大事とし、そのための手法(セッション)について記しています。
この手法を筆者はTBC(チーム・ビルディング・カウンセリング)と名付け、TBCの有効性について示しています。
TBCは具体的には、全スタッフへのコーチングを行うことでクリニックという組織全体を健全にしていく方法のようです。
スタッフが10名以下の小規模クリニックでは1人1人の仕事量が多くなり、マルチタスクも増えます。マルチタスクに向いている人も居れば向いていない人も居ます。大病院では、仕事が細分化しており完璧主義の人が1つのタスクを行うのが向いているのですが、クリニックでは同じことは当てはまらず、大病院を経験していればクリニックの仕事が務まるかというとそうではありません。スタッフの特性に合わせた仕事の与え方や声かけを行わないと、スタッフの能力を殺してしまいかねません。
小規模クリニックのスタッフ全員にコーチングを行うことで、スタッフの特性や問題を引き出し、経営者にフィードバックすることで、組織は安定化します。
本書を読むことでコーチングによるタッフマネジメントや教育についてのポイントが把握できるでしょう。
クリニックのビジョンとのすり合わせ
経営者からはビジョン、診療方針、今後の展開などについての棚卸をします。
スタッフからは就職理由や学生時代の勉強スタイルや部活動について聞くことで、元来培われたスタッフの特性を棚卸し、今の仕事に対する思いも率直に聞きます。
セッションを繰り返しながら、個々のスタッフに目標を与え、目標をさらに分解し小さな具体的な課題にします。課題を達成することでスタッフは満足感を得るとともに成長していく感覚を持つようになり、クリニックへのエンゲージメントが上がっていきます。
スタッフの詰まりの原因を探る
もともとまじめでやる気のある人は行動するスイッチが入ると、あとは目標に向かって邁進しますが、仕事に「詰まり」が発生する場合があります。
詰まりの原因の多くは、気持ちや体調です。
とくに女性が多くを占める職場ですので「妬み」などの気持ちが仕事のパフォーマンスに影響することも多いですが、コーチングによりそれを理解することで打開策は見えてきます。
鬱傾向や発達障害傾向のあるスタッフが能力を十分に発揮できない大きな理由としては体調不良にあることが多いようですので、コーチングにより体調を改善していくような提案ができます。
まとめ
今や人材の確保というのはクリニック経営においては悩みのトップですが、適切な人材を適切なポジションに配置できるようになると、離職が減るため人材確保が安定化します。
スタッフへのコーチングにより経営者はスタッフを理解し、スタッフはビジョンに沿って仕事ができるようになり、クリニックのチームマネジメントがうまくいくようになるでしょう。
本書の最後の方にはTBCについての案内が丁寧に金額まで記載されているので興味のある方は問い合わせてみてもよいでしょう。
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