【書評】『病院システムSEという生き方: エンジニアを目指す人のための新しい選択肢【書評】』乾

院内SE ICT/DX

院内SEの採用

近年、病院やクリニックのITシステムが高度化するにつれ、病院やクリニックには専門のSE(システムエンジニア)を雇ったり、情報システム室などの組織をもつようになってきました。院内SEという言葉もよく聞くようになりました。

一方で、病院の人事担当者やクリニックの院長などは院内SEの具体的業務や業務の考え方について理解が追い付いていないのが現実です。

SE人材採用のために求人票に業務の内容を書くにしても相応しい用語や業務内容を具体的に記載できず、ふわっとした求人票しか作成できません。

人材紹介会社等に頼ることもあるのですが、人材会社の言いなりになってしまったり、ミスマッチのためにSEが早期退職してしまったりと、なかなかうまくいかないケースが多いという声を聞きます。

当記事の作成者は病院やクリニックの採用に関わることも多くあるのですが下記二点で院内SEの採用難易度は高いと感じています。

  • 病院・クリニックを経験したSEに絞ると転職市場に対象者がほとんど存在しない。
  • そのため病院やクリニックので業務経験が無いSEの採用を試みるが、採用基準や適性があいまいなまま採用してしまうのでミスマッチによる早期退職の可能性が高い。

本書は病院SEに従事する著者 乾氏の短編のKindle本になりますが、病院SEの業務内容から、他の業界のSEと比較した病院SEの特徴、病院SEに向いている人物像などが記されています。

そのため本書を読むことで院内SEの採用にあたり適性や採用の評価軸を作り、病院SEの採用さらに採用後の定着に役立つでしょう。

院内SEの業務

大小様々な対応がありますが、最終的には現場の人が問題なくICT機器を使用し円滑な診療を行うためにサポートを行います。

パソコンヘルプデスク

本書著者の病院SE業務は「パソコンヘルプデスク」が一番の基本となっています。

  • 現場で働くスタッフが使用するPCのトラブルシューティング
  • 業者からの説明を受けそれをかみ砕いて現場に説明をする
  • 自分で解決できないものは業者に連絡し修理への架け橋となる

外部業者対応

  • ネットワーク業者等の保守の窓口となる
  • 電子カルテやサーバーなど数年に一度の機器の更新作業

統計業務

  • 診療科別の稼働数などの統計データを出力する
  • 適宜Excelのマクロなどで効率よくデータ収集や加工を行う
  • 統計データの分析を行う

現場端末の設定

  • 更新時の新規設定作業
  • 修復のための再設定作業

業務の性質

ヘルプデスクなので感謝されやすい

パソコンヘルプデスクが基本であるため、スタッフから助けを求められます。

助けてあげることで自然と「ありがとう」と感謝されます。そのため人から感謝され頼りにされることに喜びを感じる人にはやりがいがある業務となります。

様々な部署や外部に顔を出す

病院内は外来、入院、検査科、放射線科、総務など部署が明確に分かれていることも多いですが、院内SEはどの部署でも出入りするため顔が広くなります。

また外部の業者(ネットワークなどのインフラから電子カルテのベンダーなど色々)とのやりとりも多くなります。

仕事の幅を増やしにくい

現場からのヘルプの多くは似通っており、例外が少ないため、ヘルプがないと暇になります。

そのため、自主的に仕事が探せる人が向いています。

医療に関する勉強が必要

SEだからと言って医療のことが分からなくても良いわけではありません。

医療で用いられる専門用語や手順が分からなければ、相手の話していることが理解できませんし、こちらも適切な単語で相手に伝えられなくなってしまいます。

そうすると現場の人は「この人には何を伝えても無駄だ」となってしまい信頼を失い、結果的には課題が解決できないままになってしまいます。

院内SEに必要な能力・向いているタイプ

コミュニケーション能力・理解力

パソコンヘルプで現場に行っても、 相手の要望を聞いてくみ取る力がないと仕事ができません。

また、解決方法の提案をして、相手に理解を求めるなどコミュニケーションが 取る必要があります。

最後までやり遂げる力

自分が受けた案件がどんなに難しくて大変でも、途中で投げ出すことはやってはいけません。

現場の人は解決を望んでおり、最後までやり遂げることができない人は向いていません。 

パソコンが好きな人

院内SEの扱う機器のメインはPCとなります。そして、パソコンヘルプデスクが基本となる性格上、パソコン好きというのはヘルプデスクの課題解決に大きく寄与します。

人と関わることが好きな人

一般的にSEというとPCとにらめっこしているイメージですが、院内SEでは様々な部署から要請を受け、様々な人に関わります。人と関わることが多いため人との関りがが苦手な人には向きません。

まとめ

医療施設(病院やクリニック)ではITリテラシーが低い傾向にあるため、パソコンの基本的なスキルがある人が重宝されることがとても多くあります。

例えばちょっとしたPCの設定から、便利なソフトウェア(ビデオ会議やオンラインストレージなどなど)の利用、トラブル時に一度再起動して直すなどができるだけでも、困ってる人が多いのでこれらに対応するだけでも感謝されます。

病院SEはこのようなパソコンの基本的スキル(これらを教えられるレベルが必要)を身につけていることが最低ラインではありますが、はじめて部署や人でも意思疎通し、自分の分からないことは解決するために粘り強く取り組む必要があります。

病院には他の業種にはない専用ICT機器も存在します、電子カルテや画像管理システム(PACS)、その他固有の部門システムなどです。これらのシステムは経験者でないとなかなかつかいこなせませんので、初めての方は勉強が必要でしょう。しかし、業種共通の労務管理士システムや会計システムなどを触ったことがある人は直感的に分かることも多くありますので必ずこのような経験は役に立ちまます。経験があると何となくUIの構成やトラブルの解決方法などが理解できるのです。

ITシステムを使いこなせる病院になることで業務改善がすすみ、働きやすい職場にもなりますので、今後も院内SEの採用は増えていくことでしょう。

院内SEの採用におけるミスマッチを無くし自院にあったSEが採用され定着されることを望みます。

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