【書評】『2度と行きたくないクリニックの特徴は?』医療経営新聞 (著), 医療経営研究会 (編集) 

書籍レビュー

著者情報

次のように記されています。

医療経営新聞.com 編集部内の専門家集団として発足した医療経営研究会にて、執筆及び編集が行われています。

医療経営研究会メンバー

(敬称略 順不同)

執筆陣

・石橋治朗 石橋税務会計事務所 代表 税理士

・関口陽平 税理士

・鈴木 巌 EYソリューションズ株式会社 マネージャー

・大崎泰寛 ビジョナリーキャッシュパートナー 税理士

・大川原基剛 株式会社 後継者の学校 代表取締役 中小企業診断士

・岡部眞明 (一社)グローカルコミュニケーションセンター理事長 中小企業診断士 行政書士 MBA

・佐藤広一 エイチアールプラス社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士

・柏崎幸一 柏崎幸一 法務事務所 代表 行政書士

・三山朋子 日本メディカルメンター協会 代表

・三山清 株式会社アントレプレナーセンター

編集

・児玉秀人 医療経営新聞.com 編集長

企画主宰

・深山健彦 医療経営新聞.com

※医療経営新聞.comのWEBサイトのURLがありましたが、先には飛べずでしたのでここちらでは割愛します。Facebookページはありました。

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概要

「2度と行きたくないクリニック」というタイトルに『ブラックジャックによろしく』のイラストということで本書はいかにも目を引きます。私もつい目に留まってしまい見てしましました。クリニックの院長でしたら「自分のところはそうでないことを祈る」と思いながら見るのだろうなと想像が掻き立てられます。

本書は患者にアンケートをとったうえで患者側がどうのようにしてクリニックを選んでいるのかということを示しています。

なお、本書の冒頭ではアンケートの対象とし東京都内の220名で年齢層や男女比のグラフがありますが、比較的40-50代が多いデータだということは注意しておかなけれなりません。

例えば都心や都心ベッドタウンの生産年齢世代の患者層を想定し開業するまたは開業している先生にとっては大いに参考になるかと思います。一方で地方で比較的高齢者をメインターゲットとする場合には全てそのまま参考にするというのは要注意です。

何となく「こういうクリニックは嫌われるだろうな」というのは感じている先生やスタッフは多いと思いますが、実際にそれが見え化かされていることで気づきを与えれくれます。一方で私にとっては「意外とそこは気にしていなかったんだ」という内容もあったため、自分自身の感覚のズレも教えてもらえるような内容だと感じました。

また、本書ではクリニックや病院経営において不可欠な理念教育やスタッフ教育についても触れており、客観的なアンケートとあわせることでクリニックの経営や方針に役立つものと思います。

患者がクリニックを選ぶときにどこを見ているか

クリニックを探す手段

インターネットによる検索が当たり前になった世の中において、クリニックを探すにあたっては自分自身が能動的に探す傾向にあるようです。逆に、クリニックから発信されるプッシュ型の情報に関しては来院タイミングと会わないと効果が少ないということです。これは考えてみると当たり前なのですが病院やクリニックに行くことを予定していない40-50代の層にとっては、チラシなどの広告は効果が低いということです。

また、患者は家族や友人の意見も大切にしているとしています。そして、インターネットの情報と家族や友人の情報を照らし合わせ情報を取捨選択しているというのが40-50代に最も当てはまるクリニックの探し方だということです。

家族や友人の意見も大切にしているという観点はインターネット時代と関係なく、目の前にいる1人の患者さんを大事にするということは非常に大事なことと言えるということになります。その1人の患者さんの向こうには100人の来院患者候補がいるのかもしれません。

本書ではさらに同様のことを一緒に働くスタッフにも当てはめています。スタッフ1人が不満足な職場であるということは、そのスタッフ1人に関連する地域の100人の患者候補に伝わるかもしれないということです。

クリニックの選び方

上位は立地などの「利便性」に関わるものということでした。これはどのサービスにでも当てはまることと思います。通いやすいから通うのです。

次点で「評判」「口コミ」が入ってくるようです。

また、これは再度同クリニックを利用する人になりますが、同点程度で「スタッフの対応」「病院の雰囲気」などを経験したことで再度選択されるということでしょう。大きな不満がない限りクリニックや病院を変えるというのは少ないのかもしれないということです。

本書では考察点として次のように記しています。

4点の決定打

決定打として次の4点が重要でこのような情報はホームページで入手できることが好ましいということです。

「特定分野の治療実績」「医師の経歴・知名度」「最新の医療の情報」「価格」

通院時には保守的に決める

「通院するクリニックの決断において、人は保守的だということです。体の調子の悪い時・・・冒険して失敗するのは・・・ダメージが大きい・・・自らの経験、ご家族の経験をもとに決断をするというのは当然・・・」という記載があります。

体調がよくないとき、つまりマイナスの状態のときにはプラスを目指すのではなく「せめてゼロ」にしきたいと思う気持ちが強いのでしょう。

また来たいと思うクリニック

上位すべてが「医師の態度」「受付の対応」「看護師の態度」など人の対応に関する内容ということです。

基本的にはクリニックや病院は行きたくない場所であるということを忘れてはいけません。つまり来院すること自体が大きなストレスとなっており、優しい対応をされるとストレスが緩和されるということです。

本書では次のように記していますので抜粋します。

「本来行きたくない場所のひとつとも言われる病院やクリニックに「また来たい」と言わせるものは何なのでしょうか? ひとつには「信頼」ということがあると思います。
アンケートデータの上位を占めるのは「人の対応」です。 信頼関係を築ける接し方の訓練は、「正しい考え方」と「正しい習慣」に基づきます。 「正しい考え方」は、医院理念にも通じます。医院理念に沿った行動を習慣化させていないと、研修などで付け焼刃的に教育しても結果が出にくいものです。 採用時からこの点に気を付けて、中長期的に改善していくしかなさそうです。」

クリニック経営においては根幹となるとても重要なことでしょう。私の経験上このへんがグラついているクリニックは患者の確保、スタッフの確保に苦労する傾向があると思います。

2度と来たくないクリニック

人の問題

上位は医師含めスタッフの「態度が悪い」ということで占められているようです。これはある意味上に挙げてきたことの裏返しではあります。1位から9位はほぼ「人の問題」ということです。教育の問題もしくは採用方針の問題があると言えるかもしれません。

すぐ改善できる問題

1-10位は人の問題ですのですぐには変えられないことも多いのですが、10-16位はすぐに改善できることばかりということです。

「下駄箱やスリッパの不潔さ」「待合室のにおい」「玄関の不潔さ」という項目は「清掃」に関する意見、「生産までの待ち時間の長さ」「待ち時間の過ごしにくさ」という項目は「待ち時間」ということでこの二つに集約されるようです。

内外装や設備を気にしている人は意外と少ない

綺麗でおしゃれなクリニックにしないといけない風潮はありますが、そこは重要なところではないようです。大事なのは、古くても清潔感があって清掃が行き届いていることのようです。

また、設備に関しても「最新かどうか」はあまり関心がないように思えるということです。

内外装や設備はお金が大きくかかるものですが、「2度と来たくない」と思わせないようにする抑止力にはならないだろうということです。

まとめと感想

本書に次のような記載がありこれが全てを表しているものと思いました。

「・・・患者さんが「2度と来たくない」と思う理由はほとんどが、「人の問題」だと言えるのではないでしょうか。 決して人気のアミューズメントパークのようなサプライズに満ちたホスピタリティを望んでいるわけではなく、ただ単にイラッとしたくないだけなのです。 クリニックに行くというのはほとんどの場合、体に不調がある時です。 そんな時はいつも見過ごすような、些細な人の言動や行動でもイライラしてしまいがちです。」

行かなくて済むのであれば行きたくないのが医療機関です。患者さんは来たくて来ているのではない、来た時点でストレスを抱えているので、普段より気が立っていたり滅入ったりしているということは分かっておく必要があるでしょう。

これを考えたうえで、医療機関のフィロソフィーやビジョン、方針や教育を作っていくとより強い経営ができるのではないかと思われます。

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